鵺のなく頃に

アニメ・ゲーム・イベント・野球の感想を気ままに書き綴ります。

アインシュタインより愛を込めて 感想

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アインシュタインより愛を込めて』をクリアしたので、感想を書いていこうと思います。各ヒロイン個別ルートについては過去記事で簡単に感想を書いたので、今回はGRANDルートや作品全体の講評などを中心に綴っていこうかなと。

 

はじめに

そもそも僕がこの作品に興味を持ったきっかけは原画のきみしま青先生でした。以前からお名前は存じ上げていましたが、今年の絵師100人展で実際に絵を拝見して心が惹かれ、活動を追いかけるようになりました。そうして少し経った頃に、Twitterできみしま青先生が原画を手掛けるエロゲが今度発売されるという情報を手に入れ、興味が出てきたので調べてみると「GLOVETY」という新しいブランドの1作目であるということが判明。さらに、企画脚本:新島夕、音楽:水月陵・竹下智博、販売:ビジュアルアーツという制作陣を見て、「Summer Pockets REFLECTION BLUE」を今年の夏に遊んだばっかりの僕としては見覚えのある名前が並んでいるなあと既視感や安心感が入り混じったような感情になりました。(恋×シンアイ彼女という作品を一緒に制作していたことは当初は知らなかったです。)新島先生の作品は「はつゆきさくら」を数年前に遊んだことがあるくらいですが、はつゆきさくらもサマポケも面白かったので今作も十分に期待していました。

シナリオ

うーん・・・消化不良というか物足りないというか、面白かった部分もあるけれど不満も少なからずあるという内容でした。

GRANDルート(過去編)

最初はロミと周太が登場する過去編からスタート。幼い頃のロミや周太の性格や二人の親の様子が描かれていて、これまでぼんやりと語られていた7年前の出来事が明らかになりました。昔も今もロミと周太はあまり変わりませんでしたね。周太は昔のほうが多少雰囲気が柔らかく、ひねくれている様子もまだかわいらしい程度でしたが。
周太の父親である浩太に降り掛かった事件や報道は(まだまだひよっことはいえ)同じ科学の道に携わっている自分には少々堪えるものがありました。偽造・捏造は許されないものとはいえ、再現実験がなかなか上手くいかず批判を覆すことが出来なくて次第に精神が病んでいくという流れは、STAP細胞の真偽を巡った末の笹井教授の自殺事件を思い出してしまいました。
父親の無罪を証明しようと小笠原諸島に旅立った周太とロミ。そこで偶然研究所の爆発に出会ってしまい、その場から逃れるために海に飛び込んだところで鯨に遭遇。現在の周太が記憶の片隅に封印していたと頑なに話していた割には、あんまりショッキングな内容ではないなと思ってしまいました。どちらかというと記憶を封印する原因になったのは死んでいた父親を目撃してしまったことが主たる要因ですかね。
時代が現在に戻って、周太とΣの会話へ。鯨は地球よりも何万年も進んだ文明を有していた遠くの星の知的情報体であること、Σはその情報体を導くナビゲーター・AIであることを改めて説明してくれました。そして、現在進行系でロミに危険が迫っていることをΣから伝えられ、ぶっつけ本番でアインシュタインを操作して助けに行くことに。このあたりはいかにも最終局面に向かう直前というかラストダンジョンに突入する決戦前夜みたいな雰囲気があってワクワクしました。

この後の内容は作品全体の評価にも大きく関わってくるので、次項で。

GRANDルート(現在編)+全体を振り返って

個人的に最も心の中にモヤモヤが残っているのがGRANDルート最終局面の展開の速さですね。これは多くの人が似たような感想を述べているようなので、ある程度は共通認識だと思います。

メシアとギリアムの騎士との戦闘中に何者かが鯨に侵入/襲撃しようとしていることをΣに伝えられ、アインシュタイン・ロミ・メシア・星は侵入者を撃退するために鯨へ向かうことに。そこに現れたのは、新世界の扉を開き真理を垣間見ることを望む"周太のもう一つの人格"。しかし、この世界(ロミルート)での科学特捜部での活動、または他の世界線(他ヒロインルート)での交流を通して街に灯りをともし、人との繋がりや愛情を育み知ってきた周太は見事に弱い自分を打ち倒し、世界の崩壊を食い止めることが出来た。ここは素直に胸が熱くなりました。作品のテーマでもある『愛』の在り方の1つを見せつけられたと思います。

ただ、謎の展開が続くのはここから。周太がそのまま消滅したらロミのエッチシーンはどうなるんだ?と思っていたら、まさかの周太の体は燃え尽きたのではなく星が高速で回収していたという事実が明らかに。さらに、郷田が周太の父親を殺した真犯人であること、自身が彗星機構のNo.2であること、巫女という超次元の存在について郷田の口から説明が。そして、周太とロミの絶体絶命のピンチになって初めて登場/復活した周太の父親。タイトル回収。
ここがあまりにも唐突で話の流れが早すぎる。いや、郷田さんに裏がありそうだとか、魂の研究をしていた父親なら自分の魂を何かに乗り移らせてこの世に留まらせておいてもおかしくはないよなだとかは思ってましたよ。ただ、夏休み最終日に溜まっていた宿題を片付けるみたいに、物語の最後の最後に駆け足で伏線回収しましたよ的なかんじでやられても消化不良感しか無かったです。父親の最後のメッセージでタイトルを回収したときは、ここで来るのか~!とテンションが上がりましたが、そのままエンディングに突入して困惑の渦に巻き込まれました。エンディングは良かったですよ。音楽でも述べますが新世界のαはとっても良い曲ですし、最後に男性verを流すのも趣があって良いと思いました。だからこそ、最終盤をもう少し丁寧に、郷田・巫女・父親の伏線をもうちょっと張り巡らせておいて、それを時間をかけて拾っていき話を畳んでいったら、さらに綺麗な終わり方に出来たのではないかと思わずにはいられないです。

 

全体を振り返ると、各ヒロイン個別ルート・GRAND過去編・GRAND現在鯨突入前までは、素直にお話を楽しむことが出来ていたと思います。

個別ルートはヒロインごとに物語の核心に関わるか否かの差が激しいなとも思いましたが、それはそれで良いかなと思うことも。佳純ルートはほぼボクシングの話で終わり、忍ルートも忍に関係することはお店運営の話で周太が彗星機構に連れ去られてからはもはや周太個人の話、それに対して唯々菜ルートは唯々菜本人が彗星病患者ということもあり作品の根幹に関係する内容がガッツリと出てきて、それに比例するように唯々菜自身の魅力も引き出されていったように感じました。ロミルートは言わずもがなですね。個人的にはロミともっといちゃいちゃしたシーンが見たかったという気持ちはありますが、7年という歳月がもたらしたロミの周太に対する気持ちは単なる恋人という関係を遥かに飛び越えてしまい、不思議な距離感になってしまいましたがこれはこれで見ていて心がくすぐられるもので良かったです。

GRAND過去編・GRAND現在鯨突入前までは前項でも書きましたが、ロミルートの流れを引き継ぎつつ、これまで要所要所のみを語っていた過去の出来事を述べたり彗星病や鯨の真実を語ったりと順調にストーリーを盛り上げながらラストへと繋げていく雰囲気が心地良かったです。ただ、そのラストでコケてしまったなあ・・・残念・・・というのが正直な気持ち。素材は良かった、料理も途中までは良かった、最後の味付けで過剰に調味料を加えすぎてしまったというのがこの作品の印象でした。

キャラクター

どのキャラクターも良さがあって、嫌いになるようなキャラクターはいませんでした。

周太は共通から個別ルートに入る直前あたりまでは鼻に付く性格がキツイなあと感じる時もありましたが、ヒロインそれぞれの問題に深く関わるようになってからは真剣に取り組む姿がカッコいいじゃんと見える時も増えました。ただ、キャラデザが割と童顔っぽくて容姿が割と幼そうなのに口が悪いのは違和感が。

ロミは最初から最後まで最推しキャラでした。白衣って良いですよね(個人的趣味ダダ漏れ)。右耳のイヤリングのキューブはなにか伏線かなと思ってたんですが何も無かったです。本音を言えば、本編でもっと周太といちゃいちゃしたり本人が照れたりするようなシーンが見たかった・・・。ずっと周太のことを一番に思って行動していた、むしろ周太のためにしか行動していなかったという愛情を超えた信念のような感情の向け方はけっこう新鮮でした。

唯々菜はゲームプレイ前後で一番印象が変わったキャラでした。正直、プレイする前は印象がまったくなく、どんな風にシナリオに絡んでくるのかと思っていたらロミ以外の3人の中で最も話に入ってくるとは。また、意外と唯々菜本人も自分の気持ちを出してきたり、謎のラーメン推しをしてきたり、彗星病の設定を抜きにしても好きになる要素が多かったです。私服でのポニーテールと制服での白ニーソは至高です。

忍と佳純は上記2人に比べるとちょっと印象が薄かったですね。特に佳純。見た目のギャルっぽさに対して性格は良いというのはギャップ萌え要素はありましたが、佳純ルートではだいたい片桐も一緒にいたため、むしろ片桐の評価が上がってしまった感。忍はエピローグの子供と一緒にいたCGがとても良かったですね。よく考えると一番年上なのに天然ポジションなのは美味しい立ち位置だったのかも。

サブキャラも意外と感情移入することができたかな。星まりすが人間味に溢れていて情に厚いところがあるのは敵ながら好感度高かったです。タイトルにもあるアインシュタインがもっと話に組み込まれてきても良かったんじゃないかと思うところがあります。

イラスト

素晴らしかったです。きみしま青先生の絵に惹かれて購入した甲斐はありました。
4人集合のCGは満足度が高かったです。特に浴衣・・・!!!

音楽

BGM・ボーカル曲ともに良かったです。
BGMでは、コミカルなシーン・シリアスなシーン・感動的なシーン、様々な場面でそのときの情景や心情に合致した音楽が流れていたと思います。主題歌のオルゴールアレンジはどのゲームでも心に突き刺さりますね・・・。
ボーカル曲では、やはり「新世界のα」のインパクトですね。ゲームをプレイする前やOPの時点でも良い曲だなと思ってはいましたが、クリア後にゲームシナリオの内容と歌詞の意味のリンクを感じるようになると曲から感じる印象が一際大きくなった気がします。

その他

プレイ時間は15~20時間くらい。フルプライスにしては短かったですね。

誤字脱字多すぎないですか?特に後半は多かった気がします。
それに、明らかに文章とボイスで台詞が異なっていることも少なくなかったです。
多少のミスは全然許容しますが、今回は許容範囲を超えてましたね。

最後に

アインシュタインより愛を込めて』、いろいろ不満はありましたが、なんだかんだで楽しかったです。作品を通して、"家族愛"というものを改めて感じさせられました。周太と父親、ロミと母親、唯々菜と両親、忍と父親、佳純と父親、それぞれのキャラクターでそれぞれの親との関係性が少なからず描かれており、どれひとつとして同じものは無い。それでも、親が子を想う気持ちだけは共通しているものであるということを感じ取れました。

久々のエロゲプレイ&初めての感想記事執筆などしてみましたが、けっこう楽しかったです。実際、ハミダシクリエイティブとさくらの雲*スカアレットの恋を買っちゃたし、昔セールで買ったアペイリアとかニュートンと林檎の樹とかも積んであるし、やる気が続く限り、このスタイルで遊んでいきたいな。